Review by Son Harada (El Sur, Tokyo, published 10/25/2013)
サダトです。イラン人の両親のもと、ドイツで育ち、1974年、未だ若くして日本へ渡り剣道を学び、程なくして音楽活動を開始。後年、欧州盤CDディストリビューター “POP BIZ” 社主もつとめたサキソフォニスト=ソーラブ・サダトが、08年に突然NYへ移住してから4年~その4年間の成果がここに届きました。現在、オーネット・コールマンとリハを重ねているというサダトですから、このユニット、ソサラも即興演奏主体、いわゆるワールドミュージック・ファンには馴染みの薄い傾向のCDかも知れません。けれど、彼はサリフ・ケイタの北米ライヴのゲストでもあり、ジャジューカとの共演も経験しています。そして、そのバンドにはセネガルのサバール奏者&タマ奏者、トルコのウード&サズ奏者、あるいはドイツのキーボードほか、さまざまな国のミュージシャンが参加しています。そして、サダトの奏でるサックスは、どう聞いてみても、やっぱりイラン音楽のトーンというものを感じさせます。決して激することなく、時にゆるやかに音数少なく、あるいは時にメロディックにムーディーにもなり、そして時として饒舌にリズムに乗ってそれは奏でられます。加えて、アジテーションとも、シアトリカルなアクトとも、ポエットリーディングとも聞こえるサダト自身のヴォイスもアルバムの随所で聞こえます。あるいは、ダブ、ローファイなエレクトロ・サウンドやパンキッシュなギター、イラン民主化運動のデモ・シーン、あるいは日本の演歌、クレズマー、アラブの旋法等々も加わり、曲ごとの変化も聞かせます。そして、そうした音の数々が“NU WORLD TRASH” として響く仕掛け。~それがたぶんソサラです。それは、いかにも、イラン国籍でありながら、イラン入国を拒否されるという、アナーキーな愛国者?~コスモポリットなサダトの立場が反映されている仕掛けかも知れません。